これでいいのか、国民投票法案
いま、参議院・日本国憲法に関する調査特別委員会において、「国民投票法案」に関する審議が行われています。インターネット中継で見ていますが、正直、安倍総理の答弁を聞けば聞くほど不信感がつのるのは私だけでしょうか。
それはともかく。
私自身、憲法改正のための手続法自体は必要であろうと思います。
それは、永六輔氏がラジオで話していましたが、文章的にも分かりにくい憲法の条文を、分かりやすくする必要はあろうというもの。これには賛成です。
その上で、平和を希求するためのものであって欲しいと思います。
さて、現在審議され、与党の多数で通過するであろう法案の全文は、PDFで公開されています(2007年4月に衆議院を通過した法案(併合修正案))。
これを見て、唖然としたことは、相も変わらず不要な点が残っていることです。それは、「性別」の項目。以下、該当箇所を引用します。(強調は筆者)
第三節 投票人名簿
(投票人名簿の記載事項等)
第二十一条 投票人名簿には、投票人の氏名、住所、性別及び生年月日等の記載(前条第二項の規定により磁気ディスクをもって調製する投票人名簿にあっては、記録)をしなければならない。
第四節 在外投票人名簿
(在外投票人名簿の記載事項等)
第三十四条 在外投票人名簿には、投票人の氏名、最終住所(投票人が国外へ住所を移す直前に住民票に記載されていた住所をいう。以下同じ。)又は申請の時(第三十七条第一項第一号に掲げる者にあっては投票人が公職選挙法第三十条の五第一項の規定による申請書を同条第二項に規定する領事官又は同項に規定する総務省令・外務省令で定める者に提出した時をいい、第三十七条第一項第二号に掲げる者にあっては投票人が第三十六条第一項の規定による申請書を同条第二項に規定する領事官又は同項に規定する総務省令・外務省令で定める者に提出した時をいう。同条第一項及び第三項において同じ。)における本籍、性別及び生年月日等の記載(前条第二項の規定により磁気ディスクをもって調製する在外投票人名簿にあっては、記録)をしなければならない。
こうして作られた名簿をもって、投票所で何をするかというと、
第五節 投票及び開票
(投票所においての投票)
第五十五条 投票人は、国民投票の当日、自ら投票所に行き、投票をしなければならない。
2 投票人は、投票人名簿又はその抄本(当該投票人名簿が第二十条第二項の規定により磁気ディスクをもって調製されている場合には、当該投票人名簿に記録されている全部若しくは一部の事項又は当該事項を記載した書類。第六十九条及び第七十条において同じ。)の対照を経なければ、投票をすることができない。
私は疑問なのですが、憲法改正のための手続法に関して、性別を届けることは必要事項でしょうか。
最近、世間の関心は低くなってしまったかもしれませんが、性同一性障害の人もいます。その中には、「性別」に関する問題を抱えている人も多いのです。それは、一般社会の中では、戸籍上の性別とは逆の性別で暮らし、近所の人たちからも違和感なく普通に接してもらえている人たちです。中には、近所の人はその人が性同一性障害であることを知らない、気付いていないケースもあります。
どうしても性別が必要だ、というのなら仕方がありません。
しかし私には、性別という項目が、この法律にはどうしても必要だと思えないのです。国会議員の皆さんは、全会一致で性同一性障害に関する特例法を可決した人たちではなかったのですか。あれはポーズだけだったのですか。そう問いたいです。
さて、この法案のもう一つの問題点。
第三章 国民投票の効果
第百二十六条 国民投票において、憲法改正案に対する賛成の投票の数が第九十八条第二項に規定する投票総数の二分の一を超えた場合は、当該憲法改正について日本国憲法第九十六条第一項の国民の承認があったものとする。
2 内閣総理大臣は、第九十八条第二項の規定により、憲法改正案に対する賛成の投票の数が同項に規定する投票総数の二分の一を超える旨の通知を受けたときは、直ちに当該憲法改正の公布のための手続を執らなければならない。
この投票総数に関しては、第九十八条2に、「投票総数(憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票の数を合計した数をいう。)」と定義してあります。
つまり、投票率が50%の場合、有権者の25%以上の賛成があれば憲法改正が可能になるということになります。40%の場合は20%と、どんどん低くなってしまうでしょう。
確かに、最低投票率をこの法案内に定義することは難しいでしょう。
ただし、この第百二十六条はいただけません。投票総数ではなく、「有権者数の二分の一を越える」とするべきだと思います。
こうすると、ボイコット運動が起きる可能性があると指摘する人もいるようですが、そうなればそうでいいと思います。それも世論ではないのですか?
他にもいろいろ問題点はありそうですが、軽く見ただけでこういう問題点が出てきました。
正直、稚拙にやって欲しくはありません。
もっと慎重に審議して欲しかったと思います。
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コメント
>性同一性障害の人もいます。その中には、「性別」に関する問題を
>抱えている人も多いのです。それは、一般社会の中では、
>戸籍上の性別とは逆の性別で暮らし、近所の人たちからも
>違和感なく普通に接してもらえている人たちです。中には、
>近所の人はその人が性同一性障害であることを知らない、
>気付いていないケースもあります。
そういった人たちが、そんな状況から脱して、こういった場面で正々堂々と自分の思う性別を書くことができ、あるいはお役所や勤め先がそう書くことができるようにする法律だったと思います。
なので、いま相手の性別を求めることに対する問題はクリアされたはずです。いまや性同一性障害の人たちも自らの戸籍上の性別提示を望んでいるはずです。
住基台帳での個人特定の要素は氏名・生年月日・現住所・性別です。
これらの一点でも欠けたら、おそらく個人特定は不可能だと思いますしいまさら別の項目は追加できません。にもかかわらずそれらのいずれかの情報提示を阻むことがあるのは好ましくありません。
そういった目的ででもあの法律はできたと推察されます。
投稿: 読者 | 2007.05.12 09:51
>読者さん
このような拙文へのコメント、ありがとうございます。
どちらかというと、あまり冷静にならずに勢いで書いたので、ぜんぜんまとまってませんのに、ご意見いただけて嬉しいです。
>そういった人たちが、そんな状況から脱して、こういった場面で正々堂々と自分の思う性別を書くことができ、あるいはお役所や勤め先がそう書くことができるようにする法律だったと思います。
>なので、いま相手の性別を求めることに対する問題はクリアされたはずです。いまや性同一性障害の人たちも自らの戸籍上の性別提示を望んでいるはずです。
残念ながら、いまの状況では完全にはそうなっていないと思います。
確かに、一部の当事者の人たちは、この法律に従って戸籍上の性別を変更し、自らの性別提示をすることができるようになりました。
しかし、それはまだごく一部の人である、ということです。
それはひとえにハードルの高さ(手術済みなど)があるのですが、そういう人たちは相変わらず性別を出すことができずに苦しんでいます。私はそれを間近に見ていますのでよく分かるんです。まあ、それ以外の生活では何の支障もないんですが。投票所での不愉快なシーンは一緒にいて感じました。
この法律の見直しによって条件が少しでも緩和されれば、もっと大勢の苦しんでいる人たちを救えると思うのですが……いまの情勢では、微妙ですからね。
>住基台帳での個人特定の要素は氏名・生年月日・現住所・性別です。
住基台帳に関してはいろいろ思うところがあるのですが、ここにも性別は必要か?というのが、そもそもの私の考えだったりします。
この話題に関してコメントで書くのは長くなりすぎそうなので、時間がある時にでも改めて書こうかなと思います。
投稿: 夢野みさを | 2007.05.12 15:11