父の無念を思うなら、言ってはいけない言葉だった
現職の伊藤一長氏(享年61)が選挙運動中に射殺された長崎市長選で、伊藤氏の後継として立候補した娘婿の新聞記者、横尾誠氏(40)が、同じく補充立候補した元市課長、田上富久氏(50)に敗れた。「悔しさを表すには私が出るしかなかった」と述べたが、世襲への批判は予想以上に強かった。妻で伊藤氏の長女優子さん(36)は「長崎市民に、父はその程度の存在だったのか。父が浮かばれない」と叫び、ショックのあまり倒れ込んだ。
(中略)
横では、スタッフに支えられながら立っているのが精いっぱいの優子さんがいた。あいさつのためマイクを渡されると、押さえていた思いがほとばしった。「率直に言わせてもらえば、長崎市民の方々、父伊藤一長は、その程度の存在だったんですか! 残念です。父が浮かばれない。愛する長崎にこんな仕打ちをされて…」。突然、背後から射殺された父、その遺志を継いだ夫の落選。現実を突きつけられ、普段冷静な優子さんが、ひどく取り乱した。しゃべり終わると崩れ落ちるように倒れ、大声で号泣した。(nikkansports.com)
昨日行われた、統一地方選挙・後半戦。
この選挙全体を通して思うところはいろいろあるが、まず、この長崎市長選におけるこの発言が、気になって仕方がなかった。
彼女の気持ちも分からなくはない。だが、この発言はないだろう。これまで3期、長崎市長を勤めてきた伊藤一長氏の顔に泥を塗る発言だったと思う。
確かに、伊藤市政を受け継ぐという気持ちも分かるが、何をしたいのか、何を受け継ぐのか、それも外様(地元外)の人が、だ。そういう意味で接戦になったというのは、それだけでも凄いことだと思う。
しかし、負けが決まったときに、伊藤氏の長女・優子氏の言葉が飛び出てしまった。「長崎市民の方々、父伊藤一長は、その程度の存在だったんですか! 残念です。父が浮かばれない。愛する長崎にこんな仕打ちをされて…」――仕打ちとはなんだろうか。夫が落選したことか。しかしそれは決して伊藤一長氏が市民から相手にされなかったわけではない。逆に、大変慕われていたことを伺わせるエピソードがあるではないか。期日前投票には、かなりの無効票が出た。つまり、「伊藤一長」の名前を書いた有権者が大勢いたことになる。残念ながら、現在の公選法では、このような事態で再投票させてはくれないので、当然無効票となる。さらに、伊藤氏が暴漢に殺されてからも、「伊藤一長」と書いた無効票が出たという。これは明らかに無効票になることは分かっているが、伊藤市長が好きだった人たちではないだろうか。
そういった有権者の票を考えれば、もしかしたら横尾氏にも勝機があったかもしれない。しかし、これは中央政界の国会議員ではない、地域の市長である。しかも、急に出てこられても、何をするのかわからないという声も多いだろう。その受け皿として、田上氏が有効になったのが実態ではないだろうか。
そういう意味では横尾氏もよくやったと思うのだ。
しかし……優子氏の言葉が、すべてを後味悪くさせてしまった。もっと市民を信じて、そして感謝してほしかったと思う。そうでないと、多くの無効票が浮かばれないではないか。
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