運命の9.11、投票日まで、今日を入れて3日。明後日の夜には、その結果が判明することになる。
解散当初、自民党が郵政賛成派(小泉派)と反対派(反小泉派)とに分裂することによって、民主党が漁夫の利を得て政権交代が現実のものになるのではないか――多くのマスコミはそう報じていた。
しかし――この閉塞感は何だろう。
多くのマスコミは、世論調査の結果を刻々と伝えている。その内容は、今日に至るまで、「自民党有利」「自公過半数獲得か?」などといったものだ。恐ろしい。何が恐ろしいといって、結局、見た目の威勢よさ、かっこよさで投票行動を決めている人が多い、ということになる。
そんなことはない、郵政は民営化するべきだ、民間にできることは民間に、官から民へ、郵政民営化こそが改革の本丸です、改革を止めるな――
キャッチフレーズはよろしい。もううんざりだ。しかし、テレビなどのマスコミは、刺客などと言って面白がって注目選挙区ばかり追いかける。そして、議論にもなっていない討論なるものを垂れ流す。討論は必要だが、討論になっていないものが多すぎるのだ。特に与党。ひどすぎやしないか。問題は郵政だけでないのに、郵政賛成か、反対かで決めてくれ。他の政策はすべて自民党だけど郵政はちょっとという人はどちらに入れたほうがいいのかという疑問に対しては、それは総合的に判断してくれという。ならばそれをきちんというべきだというと、いや今回は郵政だ――お話にもならないが、昨日のテレビで見た討論で出た話。おそらく、この自民党の論客(ともいいたくない人物だが)がよくないのか、正直好感度は下がりまくりだ。
政府の郵政民営化法案の不備を野党が突くと、それには答えずに自分の主張をただ垂れ流す。肝心な点には答えない。これが、これまでの討論(すべてではないが)を見た私が受けた印象だ。与党は、野党と違って官僚をしっかり動かせる。すなわち、それだけ表に出ない情報をも握っているはず。なのに、はっきりしたことを言えない。そもそも、自民党のマニフェスト自体が官僚の作った作文なのだから、官から民へなどと白々しい。郵政民営化は、財務省の悲願なのだ。要するに、郵政民営化というのは、アメリカの御機嫌伺いである他に、財務省の権限増大のための第一歩であることを、しっかり指摘するべきだ。それをせずに、耳触りの良い「改革、改革」を連呼するから、ふだんそれほど政治に関心が無かった層とかが、乗ってしまうのだろう。
前置きが長くなってしまったが、今回紹介するのは、「朝まで生テレビ」「サンデープロジェクト」などでおなじみのジャーナリスト・田原総一朗が描く『日本の戦争』(小学館文庫)だ。少年時代に終戦を迎えた田原氏は、ずっと疑問に思っていたことがあった。「なぜ、日本は負ける戦争をしたのか」――その謎を解明するために、調査し、書き上げて2000年に上梓されたのが本書である。昨年末に文庫化された本書を読み取ると、いままでの歴史教育の中で刷り込まれた勘違いなどが浮き彫りになってくる。いや、そもそも刷り込まれていない。授業では時間がなく、サラッと流してしまうから独学することが多いが、どうしても偏った本が多く、こういった素直な気持ちから取り組まれた本が少ないからだろうか。思い込みをしてしまうのだ。その中でこの本に出会い、決して歴史書ではないが、史実と史観を組み合わせて読み解こうとする良書だ。これがすべてではないと思うが、近代史を考え直すためにも必読の書。アジアとの関係も、見えてくる。少し分厚い本ではあるが、読みやすいのでぜひ手に取って欲しい。目次から紹介すると――「第1章 富国強兵―「強兵」はいつから「富国」に優先されたか/第2章 和魂洋才―大和魂とはそもそも「もののあはれを知る心」だった/第3章 自由民権―なぜ明治の日本から「自由」が消えていったか/第4章 帝国主義―「日清・日露戦争」「日韓併合」は「侵略」だったのか/第5章 昭和維新―暴走したのは本当に「軍」だけだったか/第6章 五族協和―「日本の軍事力でアジアを開放」は本気だった?/第7章 八紘一宇―日本を「大東亜戦争」に引きずり込んだのは誰か」
私がここで本書を紹介したかったのは、ただ一つ。ああ、いまの日本はいつか来た道をまたたどろうとしている――そのことゆえだ。残念ながら、ずっと反戦・平和を訴えてきた創価学会を支持母体に持つはずの公明党までもが、その片棒を担いでいて、何に疑問も感じていない。創価学会の機関紙「聖教新聞」までもがそれを扇動しているのだから何をか言わんやだ。
いま一度、立ち止まって考えたい。
「日本の行き先を決めるのは、あなたです」
誰もが、戦争など望んでいない。しかし、戦争はなくならない。争点は郵政民営化ではない。その後だ。与党の幹部は、郵政の後はどんどん改革を行なう、と明言した。その改革とは何か。人権擁護法案であったり、外国人参政権などの耳ざわりはよいが、どんどんものを言えなくさせるための改革ではないのか。民主党はまだ自由闊達な議論ができるが、今回の選挙によって、自民党も公明党と肩を並べる政党になった。そして、比例は公明党へなどと訴える自民党候補、一部の無所属候補。これらはいったい何を意味するのか。惑わされずに、貴重な一票を投票して欲しい。悲惨な歴史を繰り返さないためにも。